これまでベトナム株に関する情報を発信してきましたが、改めて、自分の人生で多くの時間を過ごしたベトナムと、そのマーケットへの投資に貢献するため、本記事にまとめてみました。
ベトナム株とは
世界市場の中での位置づけ
投資家の視点で見ると、いまベトナムの株式市場は、世界市場の中で「フロンティア」市場と定義されています。
市場が発展している順で、先進国、新興国、フロンティア、そしてスタンドアローン市場というような区分があり、その中で、環境が整っていないリスク(そして希望?)のある市場ということです。
例えば、全世界株のインデックス投資先として有名な「eMaxis Slim 全世界株式(オール・カントリー:通称オルカン)」のベンチマークであるMSCIのACWIインデックスでは、ベトナムなどのフロンティア市場は含んでいません。
ベトナム政府は、「フロンティア」から「新興国」に格上げできるように頑張っているよ
ベトナム株式市場では、外国人投資家の取引に制限があり、多くの銘柄が、基本的には、発行株式全体の49%までしか、外国人投資家が所有することができません。
これを、FOL(Foreign Ownership Limit)と言いますが、これがフロンティア市場のままである主な理由の一つと言われています。
成長性
しかし、その成長性には近年大きく注目されています。
一つが国の経済成長率の高さです。
ここ20年間、ずっと6%程度の成長を継続しています。コロナショックでもマイナス成長にならず、東南アジア独り勝ちと言われていました。(参照:日経新聞記事)
上のグラフは、GDP成長率の比較です。米国、日本、タイと比較して、ベトナムがほぼすべての期間で上位の高い成長率を維持しています。
政治の安定性
また、良く言われているのが、政治の安定性です。
共産党一党独裁で、四柱と呼ばれる共産党序列1~4位の最高幹部の集団指導体制を取っています。
但し、近年汚職摘発の事件が大きく取り沙汰されており、チョン書記長の後任がいない話も聞こえ、若干将来の政治の不安は個人的にはありますが、とは言え他国と比べると政治の安定性は抜群です。党と軍の強い管理で、テロは無いです。
度重なる戦争の歴史からか、米国、中国、ロシアとの関係を始め、外交のバランスも非常に巧みな国です。上記の経済成長と政治的な安定から、日本や韓国をはじめ、多くの国がベトナムへの投資を行っています。
ちなみに、日本との関係も非常によく、今年(2023年)は外交関係樹立50周年で盛り上がっています。また、日本にいる外国人の数で、2番目に多いのは、ベトナム人です。もはや都心のコンビニではベトナム語が通じそうな勢いです。
以下の本はベトナムという国を知る上で大変参考になります。前大使の名著です。
実際の株価チャート
(出展:Tradingview )
さて、実際の株価はというと、現在(2023年2月末)、上図のとおりです。
時期をずらすとすぐ変動するので若干恣意的ですが、ベトナムの代表的なインデックスであるVNINDEXは、日経平均や米国のS&P500と比べて、それほど悪くない、かつ、大きく上振れしている時期がある、ということが言えると思います。
個別株になると、1年で数倍に伸びる銘柄もいくつかありました。それがベトナム株の魅力だと思います。
例えば、SSI証券という最大手の証券会社の株は、コロナ期から2年で株価が8倍になったよ!
一方で、急落する銘柄もあり、例えば、SSI証券と同様にベトナムを代表する大企業である、ノバランド(NVL)という不動産企業は、とある事件により、ここ半年で87%ほど低下しました。そして今(2023年2月末)、経営破綻の可能性があります。ひどいのは、Phat Dat不動産(PDR)という同類の会社も同様の値動きをしており、実は、前述のSSI証券も先ほどの最高値から直近の最安値まで70%程度下落しており、すべてここ1年くらいの話です。
2023年2月末現在の市況もあまり良くないですが、その中で大きく上がっている銘柄もいくつかあります。銀行セクターが代表的で、Vietcombank(VCB)は史上最高値更新、BIDV(BID)もそれに近づきました。
結局、大きく上がり、大きく下がる、そして将来も大きく上がる可能性が高い、というのがベトナム株式市場の特徴と思います。
ベトナム株の始め方
私のように、海外在住で日本の非居住者は、日本の証券会社が使えないこともあり、現地証券会社で取り引きすることになります。
ベトナムに住んでいる人は、私と同様、ベトナムの証券会社で口座開設をして取引をすることになります。
一方、日本に住んでいる人は、いくつか選択肢があり、以下のとおりです。
日本の証券会社で個別株を取り引きする
日本では、SBI証券、岩井コスモ証券、アイザワ証券、むさし証券などがベトナム株を取り扱っています。
<日本の証券会社で取り引きする場合の特徴>
・NISAが適用可能
・手数料が高い(最低でも一売買につき、5,500円~6,500円程度)
・安心感がある(日本人がサポートしてくれる)
・銘柄が限定されている(優良銘柄を抽出してくれている?)
(出典:筆者作成、2023年2月28日時点)
この中だと、SBI証券はネット取引が可能で、最も有名で安心感があります。
アイザワ証券は手数料も安く最も現地にコミットしている感じがあり、むさし証券は最低購入金額が100万円からというハードルがあります。岩井コスモ証券はネット取引が無いのがネックです。
現在(2023年3月)、取扱い銘柄数は、SBI証券が、320銘柄、アイザワ証券が282銘柄、むさし証券が26銘柄、岩井コスモ証券は非公開、でした。
日本の証券会社でベトナム株投資信託/ETFを取り引きする
個別銘柄に投資するのがハードルが高いと感じる場合、日本の証券会社が、ベトナムの投資信託やETFを扱っています。
<国内のベトナム株ファンド>
複数の投資信託があり、例えば、モーニングスターのサイトで探せます。2023年3月時点で、総合レーティング★5つのものは以下です。
・三井住友DS「ベトナム株式ファンド」
→販売会社:SBI証券(銘柄ページ)、楽天証券(銘柄ページ)、など
・T&D「T&D ベトナム株式ファンド 『愛称:V-Star』」
→販売会社:SBI証券(銘柄ページ)、楽天証券(銘柄ページ)、など
また、ETFもありますが、国内証券会社で購入可能なETFは少ないです。楽天証券では、以下の3銘柄を取り扱っています。
→楽天証券の検索結果。
・ヴァンエック・ベクトル・ベトナムETF(VNM)
・db xトラッカーズ・FTSEベトナム UCITS ETF
・db x トラッカーズ FTSEベトナム・スワップ UCITS ETF
ベトナムの証券会社で個別株/ETFを取り引きする
日本に住んでいる人も、ベトナムに行かずして、ベトナムの証券会社で口座開設・取引が可能です。
ベトナムに住んでいる人は、ベトナムの証券会社一択です。
特徴としては、
・手数料が圧倒的に安い
・日本語可能な担当者もいる(SSI証券など)
・銘柄が圧倒的に多い(悪い銘柄も多いが)
・現地のETFが取り引きできる
・口座開設が複雑(★このサイトで解説)
・入金が面倒(★このサイトで解説)、但し為替レートは有利にできる
・税金も安い(ベトナム居住の場合)
などなど
以下では、現地証券会社で口座開設をして、ベトナム株を取り引きする前提で、詳細を紹介するよ。
現地証券会社の口座開設方法
日本に住んでいる場合、ベトナムに住んでいる場合で分けて紹介します。
日本に住んでいる場合
ベトナムの最大手証券会社のSSI証券は、日本人をターゲットにしており、日本にいながら、現地の証券会社の口座を開設して取引することをサポートしています。
以下に詳細を記載しています。
*以下記事で開設後は、このページの下の方を参考に取引してください。
ベトナムに住んでいる場合
現地証券会社はかなりの数がありますが、やはり、SSI証券が最も良いと思います。日本人向けのサポート体制(日本語画面、日本語スタッフ、メーリングリスト、口座開設サポート等)があるからです。
また、大和証券のベトナム株ファンドの目論見書を見ると、SSI証券が助言をしていることが記載されており、日系企業からも信用されいることが窺えます。
<開設の大まかな手順>
1.Webサイトで口座開設申請 → SSI証券口座開設ページ
(*下の方に記載の、「出金」の箇所に注意事項あり)
2.パスポートとレジデンスカードの公証
意外と簡単、かつ、安いです。
SSI証券の担当者が、自宅の近くの公証役場の場所を丁寧に教えてくれます。
公証役場に行った際も、私は担当のブローカーに電話して役場の担当者に依頼してもらいました。
3.書類にサイン
SSI証券の支店に行くか、郵送でもOKのようです。
株式取引のための「間接投資用口座」として、BIDVの口座も作ります。これはSSIと連動しており、BIDV一般口座とはまた別です。
4.口座開設、入金
5.取引
「SSI iBoard」というスマホアプリで取り引きができます。他にWebブラウザや、ブローカー経由でも取り引きできます。
「SSI Mobile」という古いアプリもありそちらの方が好きでしたが、今はあまり取り引きができないように制限がされています。
分からないところがあれば、担当ブローカーが付くので、丁寧に教えてくれます。日本語担当者か、英語担当者が付くと思います。支店に行けば担当者変更も可能です。
SSI証券での取引方法
<入金方法>
入金は銀行間振込でできます。
私はベトナム国内の銀行口座(給与口座)からBIDVの口座に入金しています。
なお、Wise(旧TransferWise)を利用してBIDVに直接送金も可能です。(Wiseについては、以下記事参照)
入金の留意点としては、将来出金の際に、ベトナムの国内から海外に資金移動する際に、審査が厳しいということです。担当者から言われたのは、給与口座からの振込か、海外から入金した額しか基本的には海外に送金できないとのことでした
(一般的には、それ以外の入金方法は日本人ではない気がしますが。)。
出元の不明な金額は海外に送れない、ということです。
<出金方法>
・ベトナム国内での出金
基本的に株式投資用に口座開設をしたBIDVの 支店窓口に直接行って出金するしか方法がないです(2023年現在)。
その際、BIDVの支店によりますが、担当者が慣れていないこともあるので、SSIのブローカーに事前に連絡して、サポートをしてもらいながら出金すると良いでしょう(窓口で電話してもらうなど。)。
なお、本人でなくても委任状があれば出金できますが、委任状は、委任する人と本人が一緒に窓口に行って作成する必要があります。
・日本の口座への出金(海外送金)
帰任した時に備えて、私はかなり調査して、基本的にできないかなと思っていました。が、BIDVではNam Ky Khoi Nghia支店で間接投資用口座を作ることで、BIDVへ指示して、日本の銀行口座へ送金することが可能と回答です(手数料が300USDくらいかかるので試したことが無いです。)。これはSSIが日本人向けに口座開設セミナーをした際に、日本語担当者が説明しており、詳しく確認したところ、できそうでした。*1
<手数料・税金>
・株式の購入金額(株数×購入単価)に0.25%の手数料が発生
・株式の売却金額(株数×売却単価)に0.25%の手数料が発生
・株式の売却金額(株数×売却単価)に0.1%の税金が発生(源泉徴収)
・配当金額に5%の税金が発生(源泉徴収)
日本からベトナム株を購入すると、一取引5,000円以上かかるので、格段に安いです。
ちなみに、ブローカーなしを選択するともっと安くなりますが、いないと手続きを助けてくれる人が誰もいなくなるので、つけた方が良いと思います(支店に直接行けば親切なスタッフはいます。)。
<売買の留意点>
・株式購入後、2営業日後(T+2)の午後にならないと売却できません。
・株式売却後、2営業日後(T+2)の午後にならないと売却資金を利用できません。
*上2つは、2022年8月29日より有効。今後変更の可能性あり。
・BIDVの間接投資用口座は、口座維持費用として、50,000VNDかかります。初回の入金時に自動で引かれます。
・ベトナムの非居住者となった場合でも証券口座・BIDVの銀行口座の解約・凍結は必要ありません。
担当者曰く、日本からでもそのまま利用できるとのことでした(もともと外国投資用の口座だからとのこと)。
・外国人投資家の保有比率が決まっています(FPTなど優良株は2019年現在既に購入できない。)。
・流動性が低い株が結構あります。
・信用売りはできません。
・株式配当で割り当てられた株式は暫く売却できません(会社によるが、概ね3ヶ月程度後にならないと売却できないとのブローカーの回答。)。また、59株などHOSEで単元未満の株が余って売れずそのままになることがあります。(*)
こういうところを見ると、日本と比べるとまだまだ発展途上なんだな、と感じます。その代わり、成長度合い・期待は全く逆ですが。
*単元株未満の端数株の処理ですが、以下に詳細を整理しました。
外国人保有比率の制限
国内の投資家保護が目的で、外国人の保有比率の上限があります。基本は49%で、銀行は30%(30%より下に設定している銀行もある)、航空業界も30%です。この割合よりも大きくなると、買い注文が自動的に弾かれます。
以下の記事に詳細を整理しています。
配当の確認方法
配当の種類、権利落ち日、配当日カレンダー、調べ方など、ベトナム株の配当全般については、以下の記事にまとめました。
高配当銘柄の一覧
また、私が調査した高配当銘柄の一覧は、以下の記事に掲載しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。継続的に必要そうな情報を更新して、このページにまとめていきたいと考えています。
皆様の投資のお役に立てること、そしてベトナム経済の発展に貢献できれば幸いです(^^)
*1:このNam Ky Khoi Nghia支店からのみ(理由は確認したが不明)、「直接支店に出向くことなく」オンラインで日本への出金(送金)が可能とのことです。
そしてこの事実は、ハノイの支店のBIDVやSSIの職員も知らない人が多かったです。組織としての回答が担当者によって異なるので信じにくいですが、ベトナムでは良くあることかと思います。
永遠にベトナムに住むわけではない場合、これは外国人投資家にとって非常に重要なことと思います。日本に戻ってもSSIで取引を続けて、かつ出金したい場合、オンラインで送金できる準備をするためには、Nam Ky Khoi Nghia支店で間接投資用口座を作る(既に他のBIDVの支店で開設している場合は作り変える)必要がある、と理解して、私も当初ハノイのとある支店で開設していたのを、切り替えました。