ベトナム株は、日本人を含め、外国人投資家の保有比率が決まっています。FPTなど優良株は既に購入できません。最近の動向と一覧を整理したので、以下に共有したいと思います。
外国人保有比率の制限とは
ベトナム市場において、国内投資家保護を目的として、外国人による保有比率の上限が銘柄ごとに設定されています。そのため、外国人投資家への売買制限が発生する場合や、上限を超える買付注文は取引所で受付けられず失効する可能性があります。
基本は49%で、「条件付き」業界はより厳しく、銀行や航空業界は30%となっています。銀行によっては30%より下に設定している銀行もあります。この割合に達している銘柄に買い注文を出すと、自動的に弾かれます。
旧政令の60/2015/NĐ-CP以降、法律上は「条件付き」業界等を除き、上限を100%にすることが可能になりました。上限は会社ごとに定款で設定できます。上限を撤廃したのは、SSIを筆頭に、Vinamilk(VNM)、DHGなどです。
法律と最近の動向
最新の法令は2019年証券法と政令155/2020/NĐ-CPです。政府は、株式市場への外国投 資の流入を適切に管理する一方で、株式市場への外国投資を促進することを目指しています。
上記証券法のドラフト段階では、公開会社が外国人投資家の保有比率の上限を決める権利を奪う案が盛り込まれており、論争となっていました。(参照)
政府としては、MSCI(Morgan Stanley Capital International:アメリカの投資顧問会社)やFTSE Russell(ロンドン証券取引所グループの子会社)のインデックスにおける、ベトナムマーケットの分類を上げたい思惑があります。ベトナムはMSCI Frontier Marketに分類されており、当該インデックスでは、ベトナムの他には、モロッコやケニアが含まれています。そのため、徐々にこの制限を緩和しようとする動きもあります。
しかし、特に銀行業界が、長期的な戦略的パートナーの選定に支障を及ぼすとして、強く反対しています。また、50%超となり外資系企業と定義されるようになると、投資や土地取得、税務上の制限が出ることから嫌う企業もいるようです。実際、PANは2016年に一度制限を撤廃したものの、2018年に再度制限を復活させています。(参照1、参照2)CIIも、PPPプロジェクトへの参加及び不動産取得のため、上限を70%→49%に縮小させることを決定し、国家証券委員会の承認待ちです。
外国人保有比率の確認方法
方法1:SSI証券のiBoard(見やすい)
ベトナム最大の証券会社であるSSI証券のiBoardというサイトで、ログインしなくても個別銘柄ごとにチェックできるようになっています。
・真ん中上から言語を選択できるので、「日本人(Japanese)」をクリック。(日本人?w)
・右側の赤枠箇所が、外国人保有の現在の上限と売買の状況です。「持分上限」の箇所が、現時点での上限です。例えば、下図はVN30のリストですが、ACBやFPTは空欄で、持分が0であるため外国人投資家は購入できないことを表しています。「持分上限」をクリックすると、少ない/多い順に並び替えも可能です。
このサイトが最も見やすいと思います。
方法2:Vietstock
方法1で良いと思いますが、あとはやはりVietstockの銘柄ページかと思います。例えば、下図のHCMだと個別銘柄ページの赤枠の「Trading Data」をクリック。
ページの下の方に、「Foreign Trading」をクリックすると以下の画面になります。赤枠の箇所で、最新の取引で、外国人が残りどの程度購入できるかが確認できます。
同じページの、一番上に戻り、以下の赤枠箇所を確認すると、現在の外国人保有比率を確認できます。上記で確認した残りの枠を足すと、上限も確認することができます。(ここでの例:47.81+1.2=49%が上限)
方法3:VNDIRECT証券のDSTOCK
こちらも個別銘柄ごとにチェックできるようになっています。DSTOCKというサイト名になっています。最新情報が反映されていないこともあると思いますが、ニュースと合わせて確認できるので、このサイトもなんとなく見やすい気がします。
例えば、FPTを確認すると、
・左上のSearchボックスに、FPTと入力してEnterで個別銘柄のページに。
・下の方にスクロール(または「Foreign owernership」で検索)して、Foreign owernership(赤枠)をクリックすると下の画面になります。
・FOL:Foreign Ownership Limit:外国人保有比率の上限
・Current Foreign Ownership:現在の外国人保有比率
・Remaining room:あとどの程度保有比率が残っているか
*このFOLが若干最新情報の反映が遅いことも(例:HCM)。Foreignでページ内検索すると、Newsの箇所でヒットしますが、たまに比率を変更することあります。Newsの情報と併せて確認すると信頼性が高まるかと思います。
上限を撤廃した銘柄リスト
あるサイトに上限を撤廃した銘柄のリストが掲載されていたので以下に引用します。いくつか変更があったので、2021年7月30日時点の情報に更新しています。
No. | 企業名 | コード | 外国人保有比率上限 | 業態 |
1 | An Phat Securities | APG | 100% | 金融 |
2 | Saigon Securities Incorporation | SSI | 100% | 金融 |
3 | FPT Securities | FTS | 100% | 金融 |
4 | Viet Capital Securities | VCI | 100% | 金融 |
5 | Binh Minh Plastics | BMP | 100% | 製造 |
6 | Hau Giang Pharmaceutical | DHG | 100% | 製造 |
7 | Domesco Corporation | DMC | 100% | 製造 |
8 | Everpia | EVE | 100% | 製造 |
9 | GTN Foods | GTN | 100% | 製造 |
10 | Hong Ha Son La | HSL | 100% | 製造 |
11 | Vinh Hoan Corporation | VHC | 100% | 製造 |
12 | Thanh Thanh Cong-Bien Hoa | SBT | 100% | 製造 |
13 | Thien Long Group | TLG | 100% | 製造 |
14 | Taya Vietnam | TYA | 100% | 製造 |
15 | Vietnam-Italy Steel | VIS | 100% | 製造 |
16 | Mirae JSC | KMR | 100% | 製造 |
17 | Fecon Corporation | FCN | 75% | 建設 |
18 | Yeah 1 Group Corporation | YEG | 100% | メディア |
*上記表のうち、TYAは、DSTOCKで確認すると表示される比率が異なりましたが、Vietstockや会社HPで確認済みです。HCMは2021年5月5日より、100%→49%に変更。CIIもPPPプロジェクト参加と不動産取得の目的で70%→49%に変更、など、色々あります。
いかがでしたでしょうか。ベトナム株で自分が気になった点は、総合して以下に整理しています。