ベトナムでの利用が広がるビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)について、概要や法制度、取引所を調査し、日本人のとしての利用しやすさなどをまとめました。結果として、ベトナムから日本への送金方法(非公式)とも言えると思います。
ベトナムの仮想通貨を巡る状況
世界1位の普及率!!
Chainanalysisというアメリカの仮想通貨プラットフォームが出している「世界仮想通貨普及率指数(Global Crypto Adoption Index)」よると、実は、ベトナムは仮想通貨の普及率が世界1位だそうです。2020年で21%の人が利用したことがあるとのこと。NFTゲームのAxie Infinityに見られるように、仮想通貨の保有だけではなく、開発も普及しているとのこと。
実際にはベトナムでは暗号通貨(仮想通貨)は法律上保護されておらず(国家銀行から明に違法と言われています)、厳密には、仮想通貨を利用して商品やサービスの決済に使用することは禁止されています。ビットコインなどの暗号資産に対しては現在、政府が取引や関連ビジネスについての法制化作業を進めており、保有について明確な規定が無いようです(参照)。
仮想通貨「関連」の詐欺事件
また、在ホーチミン日本国総領事館から詐欺事件に関する注意喚起が出ています。詳細をVnExpressの記事で確認すると、以下のような詐欺事件がありました。
・Modern Tech 社の事件:2018年、同社が投資家を勧誘し、iFanとPincoinという仮想通貨のICOで、推定で3,200人から合計700億円程度を騙し取る。(参照:Tuoi Tre)
・Sky Mining社 の事件:2018年、自称マイニング会社の同社が、仮想通貨を生み出すためのマイニング・リグ(コンピュータ機器)を7,000台購入して、1年後に3倍の利益になると言って投資家を騙して販売した。その後同社社長がアメリカ?へ逃亡。
・OTCMAX 社の事件:VNCOINSという無価値の仮想通貨を作り、マルチ商法で販売。2017年に公安省が起訴するも、2021年3月に時間切れで捜査中断。(参照)
整理すると、仮想通貨を取り引きする過程における詐欺というよりは、仮想通貨を利用した投資機会の詐欺事件だと思われます。なので、仮想通貨に絡む詐欺事件が多いということに十分に注意してください。
それでも利用されている理由
前述の調査によると、普及している理由は、投資目的の他、送金需要であり、銀行送金よりも使い勝手が良いから。政府としては、所有や取引も「推奨」していない一方、国民の2割も所有してしまっていること、暗号資産の販売所や交換所がオンラインで多数ありドンで購入できること、ビットコインATMも(ホーチミン市に)複数あり、その実情を踏まえ、法整備を進めようとしています(参照)。
2021年6月15日付け首相決定(942/QĐ-TTg)では、電子政府戦略の一環として、今後仮想通貨の研究や試験運用を国家銀行が行うとのことで、政府としては慎重に見極めているところのようです。
ベトナムでどのように仮想通貨を売買するか
これは有象無象を含む実に膨大な選択肢があり、仮想の世界から帰って来れなくなりそうなので、以下にポイントを絞って確認しました。
1.海外在住(特にベトナム)で日本人ができる方法
2.ベトナム・ドンで入金できる方法
3.日本で出金できる方法
ベトナムの仮想通貨取引所の整理(ベトナム在住者視点)
仮想通貨は、専用の「取引所」で売買を行うことが基本です。上記のポイントを踏まえ、以下の通り分類できます。
*上表は参考まで。膨大な取引所、通貨の種類、入金方法などがあるため、必ずしも表の内容に合致しない場合もあります。
本記事では、以下の流れによる送金も目的の一つとしています。
ドンで入金 → 仮想通貨 → 円で出金
最終的には日本円を確保したいので。
日本の取引所を利用
日本は世界に先駆けて仮想通貨(暗号資産)の規制を強化してきた国であり、他の国の取引所を利用するよりリスクが減るものと考えています。
ベトナム(または海外)にいながら、日本の仮想通貨取引所を結果として利用できます。基本的には日本の居住者向けですが、(中長期の生活のベースは日本ということが前提で)日本の住所で登録します。
DMMビットコインなどはより厳格で海外からウェブサイトにアクセスできず、また、GMOコインなどは日本の携帯電話によるSMS認証が必要です。
しかし、bitFlyerは運転免許証があれば本人確認が可能で、Coincheckはベトナムの携帯電話番号ではSMSが届きませんでしたが、日本の携帯があればできる人もいるかもしれません(私は日本の携帯を持っていたので試したらSMSが届き、口座開設できました。)。
他にもいくつも取引所がありますが、開設のしやすさ、知名度や信頼性からして、結論としてはbitFlyerが最も良いと思います。
ベトナムの取引所を利用
ベトナムでも多くの仮想通貨取引所がありますが、有名なものを表の中でピックアップしました。また複数のウェブサイトで確認し、実際に登録して調査しました。
・Vicuta:画面がベトナム語のみ、更に費用が高い →△
・Remitano:P2Pで費用が安い、参加者も多い、日本語画面になる、アプリがあるなど良い面が沢山ある。小額ならID認証不要です。しかし、100USD以上の取引をする場合にベトナムの公的書類によるID認証が必要であり、日本人は使用できない(少なくとも私は不可でした。)。 →△
・VCC Exchangeは利用者が少なく、インターフェースも使いづらい。 →△
・VBTC:BietcoinVNと同じ会社が運営。ベトナム初の取引所。しかし手数料がかなり高い。 →一応利用できるので○(でも高いので利用しないと思う)
というわけで、純粋にベトナムの取引所だと以下がいいかなと考えています。
・BitcoinVN:2013年から運営している老舗。英語画面で極力シンプルにしている。情報発信も豊富で信頼性が高い。
グローバルの取引所を利用
最後にこの分類ですが、基本的には、ドンでの入金は困難で(ベトナム銀行のデビットカードを利用することも可能性としてはありますが)、住所証明が困難になりやすいかと思います。電気代の証明書や銀行の取引明細を住所入りで準備できる人は、認証が容易かもしれないので、それらに該当する、Kraken(クラーケン)やCoinmamaは
△にしています。
一方、最近規制当局の監視が厳しいですが、まずBinance(バイナンス)は開設・本人認証が簡単です。他の取引所と比較しても際立って利用しやすく、日本向け・ベトナム向けを関係なく利用可能で本当にグローバルだと思います。更に、P2Pを利用することでベトナム・ドンでも入金が可能です。なので○。
また、Paxfulも利用しやすいP2Pの取引所です。安価で、画面も分かりやすく、セキュリティも高いです。これも○です。
利用しやすい取引所(詳細)
上記でピックアップした取引所の紹介をします。
bitFlyer(ビットフライヤー)(日本)
もはや説明不要だと思いますが、日本でも知名度が高く信頼できる。2014年からサービス開始しており、同社のウェブサイトに出るように、日本国内トップクラスのビットコイン取扱量を誇る日本の代表的な仮想通貨取引所です。15種類の仮想通貨を取り扱います。
若干出金手数料が高いですが、アプリやウェブの操作性もとても良いです。セキュリティも高く、仮想通貨取引所セキュリティNo.1(*)とのことです。
私は、同社の仮想通貨ウォレットを使って取り引きしています。
→bitFlyerウェブサイト
※ Sqreen 社調べ。2018年1月発表、世界140の仮想通貨取引所を対象に調査。
BitcoinVN(ベトナム)
2013年から運営している老舗で、ベトナム最大の仮想通貨取引所です。
英語画面で極力シンプルにしています。同社のウェブサイトやTwitter、Facebook などでかなり情報発信しており、信頼性が高いです。
2021年7月から画面がリニューアルして、更にシンプルな画面になりました。
英語かベトナム語で表示されます。ほとんど文章を読む必要がないので、日本語でなくても問題ないかと思います。
入金・出金は、ベトナムの銀行からの送金の他、ホーチミン、ハノイ、ホイアンで現金でも可能。
25万ドンまでなら登録不要で利用可能。パスポート認証をすると2,000,000,000 VND/月まで取引可能です。ベトナムの住所証明ができれば更に上限が上がります。
また、流動性を確保するため他のグローバル取引所とパートナーシップを持っています。
但し、使用する際には、仮想通貨ウォレットが必要なので、コールド・ウォレットか、日本の取引所で生成したウォレットを利用した方が安全と思います。
【重要】銀行送金する場合、備考欄に、bitcoinやcryptoなど記載をしないようにしましょう。口座凍結の可能性があるとさり気なく記載されています(汗)そのため、給与口座とは別の口座から利用した方が良いかもしれません。
→BitcoinVNウェブサイト
Binance(バイナンス)(グローバル)
急速に発達し膨大な(乱立する)仮想通貨市場において、最も信頼されていると言われている情報源としてCoinMarketCapがあり、取引所のランク付けも行っています。そこで1位なのが、Binance(バイナンス)です。
最近は規制当局の監視が厳しいですが、Binance(バイナンス)は他のグローバル取引所と比べても際立って利用しやすく、日本向け・ベトナム向けを関係なく利用できます。更に、P2Pでベトナム・ドンでも入金が可能です。但し、日本円での出金はできないです。
簡単な認証でも2ビットコインの出金とかなり利用できます。法定通貨の入出金や上限の拡大、ベトナム・ドンの入金のためにはP2Pを利用しますが、そのためには政府発行IDでの認証が必要であり、そうすると日本向けを選択すると良いでしょう。
グローバル向けですが、ベトナム市場にも力を入れており、入金にはベトナムの銀行振り込みの他、MoMoやZalo Pay、Viettel Pay(そして手数料高いですがクレジットカード)などでも支払い可能なのがすごいです。
また、サポートも充実していることに加え、セキュリティへの対応も非常にしっかりしています。過去ハッキングされたことがありますが、基金による補償で、ユーザーへ影響がなかったことから、信頼性を高めています。
初心者~上級者向けの機能まで揃っていて、慣れてきたら使い方に幅が広がります。アプリもあります。
→Binanceウェブサイト
Paxful(グローバル)
同社のミッションは、「世界の忘れられた40億人の銀行口座を持つことが困難な人々に、彼らがこれまで持ってなかった手段で、お金をコントロールする力を与えること」です。
私は当初、利用のしやすさで同社を評価しましたが、加えてこのミッションは非常に素敵だと思います。エジプト移民のアメリカ人が創設者で、エストニアのエンジニアと会社を作りました。
上図のとおり、一部を日本語にすることも可能で、加えて操作性もかなり良いです。アプリもあります。
同社のウェブサイトで情報発信も非常に多く信用できます。
P2Pの取引所で参加者も多いので、BietcoinVNと比べても安価に購入できると思います。
更に、購入場面で、ベトナム市場、日本市場、他各国の市場を選択できますが、ベトナム市場だと、銀行送金に加えて、MoMoやPayPal、Amazon/iTuneギフトカード、Netellerなど多数入金方法があるのが特徴的だと思います。
住所確認までしなくても、パスポート確認で10,000USDまで取引可能です。
→Paxfulウェブサイト
ビットコインATM(おまけ)
ビットコインのATMがあります。
銀行口座不要で、本人認証も不要で、スピーディーに入出金できます。
(少し前は日本にもあったが今は無いようです。)
しかし、海外でのビットコインATMの設置は増加しているとのこと。(参照:Coin ATM Radar)
上述のCoin ATM Radarによると、ベトナムには、現在ホーチミン市に11台あるということですが、すべて機能しているか若干怪しいです。
前述のBitcoinVNが運営している安心のBitcoin ATM は、以下のFacebook ページに最新情報を掲載しているので、ここを確認した方が良いです。
まとめ
ベトナムに限る話ではないですが、仮想通貨は発展途上であり、法制度が整備されていないことに加え、投資詐欺事件、ハッキング等(ちょうど執筆完了した本日もポリネットワークの事件がありました)、様々なリスクがあるので、本記事はその利用を推奨するものではありません。
一方で、Paxfulのミッションにあるように、銀行口座を持たない人が多い国、そして経済発展が遅れている国では、貧困層のエンパワーメントや、経済発展の起爆剤に活用しようとするプロジェクトが多くあります。世の中を変える大きな可能性があります。
ベトナムに関しては、(むしろ日本よりも?)ネットワーク環境が意外と広く整備され、老若男女がスマホを利用しています。若い人口が多く、政府がデジタル化を推進しています。本業に加え、多くの人が副業やアルバイトをしており、投資に対する一般市民の関心も高いです。日本の技能実習生に見られるように、多くのベトナム人が国外に働きに出ており、より安価で利便性の高い送金需要がある。そのため、冒頭の世界第2位の普及率があると思います。
ここ数年、ベトナムのデジタル経済は急速に拡大しています。加えて、国家銀行は管理フロート制の中で違法な外貨流出を厳しく管理しており、その裏で仮想通貨に関するプレミアムが高まっているという議論があります。ベトナムにおける仮想通貨の今後の動向はとても興味深いです。
そのような背景を頭の片隅に置きながら、個人的にはかなり小額(10万ドン未満からでもOK)から、しかもその規模ならIDの提出なども不要で匿名で始められるので、非常に面白い世界だと思います。
→BitcoinVNウェブサイト
以下、参考記事👇
以下も参考記事(慣れてきた人向け)