アジアンプリンス日記

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ベトナム駐在員のメモです。遊び先、金融、不動産、法律、レストラン、生活、日々蓄積した情報で、ベトナムに関わる方の役に立てれば幸いです。(上記の「アジアンプリンス日記」をクリックすると、記事一覧を見ることができます。)

なぜBIDV(BID)は上昇しないのか:ベトナム株

BIDV ベトナム株

BIDVは言わずと知れたベトナムの大手銀行で、ビッグ4(Vietcombank、VietinBank、Agribank、BIDV)の一角です。最近までベトナム銀行銘柄は揃ってうなぎのぼりだったのに、BIDVだけいまいち。

各評価を集め、以下に整理しました。

 

BIDV株価の動き

以下は、2021年9月23日現在までの株価の動きです。長期的には上昇しているものの、コロナ以前の最高値には程遠いです(他の銀行は、最近は下落気味ですが、2020年後半にかけて最高値を更新してきました。)。

BIDV株価の動き

<Vietstockウェブサイトより抜粋>

・ベース(緑・赤):BID → 伸びてない、現在値一番下(コロナ前が最高値)

・紫:Vietcombank → まあまあ伸びている

・黄色:Techcombank → 急激に伸びた

・青:VietinBank → 急激に伸びた

・全体:2021年6月頃まで伸び、その後下落傾向

 

SSIの評価

ベトナムNo.1の証券会社である、SSIは、2021年7月に出した、2021年下半期と2022年のベトナム株式市場の見通しレポートの中で、BID(コード:BID)を「中立」と評価しており、年間目標株価は、48,000 VNDです。

現時点で最新の2021年8月9日付け企業分析では、2021年上半期の素晴らしい利益成長を下半期に維持することは困難とのこと。受取利息の強い成長、1.63%に抑えた貸倒引当金、不良債権カバー率(LLC)が131%に改善されたことにより、業績が後押しされた。コロナ第4派の影響があり、7月からの新優遇ローンの開始により、税引前利益(LNTT)が減速。しかし、2021年と2022年のLNTTの予測は、それぞれ13.5兆ドン(前年比+ 49.9%)と15.5兆ドン(前年比+ 14%)を維持。いい感じだと思います。

 

 

Vietnam Investment Reviewの評価

計画投資省配下の権威のある経済新聞ですが、2021年8月11日付記事で解説しています。それによると

・2021年度上半期は、BIDは税引前利益で82%の成長率となり、ビッグ4をリード。良い結果だった。利益が86.3%伸び、厳格な不良債権処理、安価に動員できる資本、多様な銀行サービスによる収益の拡大が貢献。VietinBankやVietcombankと比べ、多くのリスク引当金を計上。

・しかし数字だけ見ると、BIDはビッグ4最下位(銀行全体で6位)。ROAの効率が低い銀行の一つ。ただし、資本の質が改善すると予測。Tier1の比率が低いため、資本コストを低くできる。

・他の国営銀行同様、政府の指示でコロナ禍で疲弊した優先的なセクターを支援する必要がある。

 

銀行セクターの動き

Thời Báo Tài Chính(財政新聞)の記事によると、2021年6月以降、銀行セクターは利益確定の影響で下落。週末のフォーラムでの警告や、証券アナリストの中には、銀行株が高値にあると警告している人がいる。

投資家の楽観的で貪欲な集団が、銀行株に集中している。別の記事によると、VNインデックスが2021年6月に1,400に到達した時、ホーチミン証券取引所の30%を占める銀行株が明らかに主導的な役割を果たしているとのこと。

確かにその後7月に1,200台に落ち込み、9月現在は、1,350台に戻していますが、銀行株は戻っていないです。7月以降、銀行株は20~40%程度落ち込んでおり、BIDはそれほど伸びていないのに、20%下落。。。

パンデミックが長引き、引当金を計上や規制当局の要請に応え金利を下げる必要があるからとのことです(じゃあ今まではなんだったの?って感じですが。)。ただし、一部の銀行には、合併や買収などの株価にプラスの影響を与える材料があるとのこと。

VNDIRECT証券のレポートでは、2021年上期の業績が良かったものに、銀行セクターは、下半期にはNet Interest Margin(NIM:利息による収益率)の改善が鈍化すると予測。具体的には、VCBやCTGなどの国営商業銀行が、下半期にすべての顧客の貸出金利を最大1%引き下げ、BIDは貸出金利を最大1.5%引き下げ、等を実施しています。国家銀行が2022年まで金融政策の優遇を維持することをVNDIRECTは期待しており、銀行は資本コストが低くなることによりパンデミックの恩恵を受けるとしています。

そして、SSIの予測では、2022年通年は利益成長率は、他の業界よりも高いとのこと。2022年初頭からは、ワクチン接種率も上がり、経済が戻ると。。。また、他の業界と異なり、銀行は24時間利益を上げることができる。そして担保やリスク管理により、資産が安定しているとのことです。2022年に目を向けると、経済回復の際の典型的な投資先は銀行セクターとのことです!

 

86%の利益の伸びだが

依然、BIDの不良債権が非常に多く、資産の質に疑問だという指摘があります。前述のとおり、利益の絶対額では銀行全体で6位。総資産では、銀行全体で最大となるため、ROAがVietcombankやVietinBankよりも遥かに悪いという指摘です。

主に、BIDVが安価に資本を活用し、サービス収益を増やし、不良債権を積極的に処理したため、86.3%の利益があった。一方、BIDVの総資産と信用残高の増加は依然として効率的でなく、不良債権が大きく、リスクがある。特に簿外債務が同期間で17.6%増加しており、コロナ禍でそうした潜在的なリスクが高まる。株価がそれを評価している、とのことでした。(参照:Thanh Nien記事

 

まとめ

いかがだったでしょうか。銀行業界は専門的で難しいですね。。。

リスク資産が多く、規模は大きいがまだまだ非効率なので、株価もそうした評価を反映している、ということでしょうか。

現在、ベトナムは社会的距離をおいてコロナを封じ込める政策から、ウィズコロナに方針を転換しました。経済正常化に伴い、銀行業界に投機的ではない正常な資金が戻ることを祈っています。

そして再度、ページトップのグラフを見てみてください。現在、BIDは相対的に最下位ですが、2020年初頭のコロナ前は、BIDが相対的に最上位だったのです。