アジアンプリンス日記

アジアンプリンス日記

ベトナム駐在員のメモです。遊び先、金融、不動産、法律、レストラン、生活、日々蓄積した情報で、ベトナムに関わる方の役に立てれば幸いです。(上記の「アジアンプリンス日記」をクリックすると、記事一覧を見ることができます。)

なぜビナミルク株(VNM)は下がり続けているのか:ベトナム株

vinamilk ビナミルク 株 ベトナム

ベトナム株を始めて、まず注目する銘柄が、ビナミルク、ビングループ、そしてFPTかなと思います。今更ながら、なぜビナミルク株が永遠に下がり続けているのか、調査したのでメモとして記載したいと思います。

  

VNインデックスは6月28日に過去最高の1,400を突破し、破竹の勢いで上昇しているのに、なぜビナミルク株は下がり続けているのか。

VNMの日足とVN Index(オレンジ線):Tranding Viewより

 

牛乳の販売業者がたくさんあるから

2021年5月号スケッチの特集で面白かったですが、確かに今や色々な牛乳があります。ベトナム赴任に際して最初に諸先輩方から推薦されたのは、Dalatmilkを飲みなさい、ということでした。しかし、Vinamilk以外にも今や、TH true Milk、CP-Meijiほかたくさんのミルクを私も店頭で見かけます(CP-Meijiは初めて店頭でパッケージ見た時偽物っぽいな~と思ってしまいましたが、タイのCPグループと明治の正式な合弁だったという事実を初めて知りました(汗)。)。

ある記事を参考に確認すると、ビナミルクは 、2003年のNet revenew(純収益)が451 Billion VND(約22.6億円)でNet profit(当期純利益)が56 Billion VND(約2.8億円)でした。それが、2016年にはそれぞれ46,794 B (約2,339.7億円)と9,350 B(約467.5億円)と100倍以上になっています。

  a b  
  2003年 2016年 b/a
純収益 451 46,794 104
当期純利益 56 9,350 167

(単位:Billion VND) 

f:id:a6104010:20210722113124p:plain

 

しかし、2017年以降は、収益、利益ともに成長が鈍化しており、投資家の期待に応えられていないとの説明があります。

過去4四半期(Q2/2020~Q1/2021)を見ると、収益、利益ともに減少しています。原材料価格の高騰が影響しているとのこと。この時期は、コロナで販売価格も大きく上げられない。加えて、成長戦略も乏しく、競合も多い。CPTPPやEVFTAにより更に外資の圧力が増加。Rong Viet証券のレポートによると、健康志向が高まり、より栄養価の高く健康な乳製品が求められています。

 

 

外国人投資家が離れる

外国人投資家が実際のベトナム株式市場のプレーヤーであり、現在彼らのVNM離れが進んでいるとのこと。なお、2021年7月3日付けLao Dongの記事によると、2021年上半期は、HOSEで過去最大の外国人投資家の売り(32 Trillion VND)を記録し、そのうち、最大は、ホアファットで、2番目がビナミルクであり、ビナミルクの外国人投資家の売り越しの金額は6,200 Billion VND(約310億円)でした。その代わり債権やETFを購入しているとのこと。BizLIVEの記事によると、売り越しているのは、VNMを長期保有していたアクティブ・ファンドであり、2011年~2017年の躍進期に13%程度あった収益の伸びが、2018年~2020年は、4%程度へと鈍化していることが理由。例えば、Arisaig Asia Consumer Fund。別の記事によると、Arisaigは2002年にVNMを購入していたということで、すごいですね。。2007年に一旦売却、2009年に再度購入してから、2020年に売却しています。

 

国内投資家の心理(F0投資家)

ベトナム在住の方以外はあまり知らないと思いますが、ベトナムコロナ感染者をF0、F0と接触のあった人をF1、F1と接触のあった人をF2・・・と区分して、コロナ対策を実施しています。F0投資家は、それになぞらえて作られた、初めて投資する個人投資家のことです。コロナで銀行の預金金利が低下しており、投資を始める人が増加しています。

外国人投資家が売り込む中で、F0投資家のキャッシュ流入により、ベトナム市場は大きな伸びを記録し、多くの銘柄が過去最高値をつけています。実際の業績に関わらず、悪い銘柄も伸びています。

F0投資家は大きな利益を期待しており、VNMはその期待に応えられないとのことです。利益の大きい銘柄に投資するトレンドが高まっており、VNMは市場価格が高く、上昇もしていない。

近年、VNMは売上拡大のために様々な対策を実行してきた。例えば、販売網の拡大、新製品の継続的な開発、病院やレストラン、ホテルなど特定業界との連携、そして海外進出である。しかしコロナの影響もあり、まだ成長サイクルに結びついていない。なお、海外進出については、アメリカ(南カリフォルニア)のDriftwoodを2013年に70%購入し2016年に100%子会社化、また、カンボジアに2013年から参入しAngkor Dairy Products(Angkormilk)を設立しました。2014年にはポーランドに100%子会社のVinamilk Europeを設立、2018年にはラオスのLao-Jagro Development Xiengkhouangを購入。乳牛リゾートの構築計画があります(参考)。その他、中東、フィリピン市場を開拓しています。韓国では、ナッツミルクの製品市場開拓でパートナーと協業。

加えて、下記に記載がありますが、消費者ニーズの変化、そして、eコマースなど販売網の近代化など。VNMは多くの課題を抱えています。

 

ベトナムの牛乳業界

Dairy Vietnamの記事によると、人口動態と中所得者層の伸びにより、長期的には成長が期待されるが、現在の人口一人あたりの牛乳の消費はかなり低いとのことです。近年牛乳の需要は分散化しており、飽和状態にあることを示しているとの主張もあるとのこと。

前述のRong Viet証券のレポートですが、より高栄養、健康志向の需要の変化に応え、プレミアム牛乳、ヨーグルト、植物性代替品(ウォールナッツミルク、ソイミルク、マカデミアミルク)の需要が増加し、栄養価の少ないが供給量の多い(全体の7割)伝統的な成分調整?(*)の需要が減っているとのこと。業界は、フレッシュミルクの供給を増やそうとしている。

*ベトナムでは、海外から粉末状の牛乳を輸入して加工した「還元牛乳」と呼ばれるものが、まだ多く売られている。True Milkという製品がなぜあるかというと、粉ではなく、本物の牛乳だから。。。また、砂糖入りの牛乳は、子供に牛乳を普及させるために開発された。→朝日新聞GLOBE+の記事参照

なお、上述の原材料価格の高騰とは、この粉のことで、国際的な牛乳価格の変動の影響を受ける。

 

その他、GTNFoods(GTN)はVNMが75%の株を持つ会社ですが、上場廃止し、GTNが74%近く所有する子会社のVilico(VLC)に吸収合併されようとしています。GTNは、モクチャウミルク:Moc Chau Milk(MCM)を2019年末にVNMに売却完了しています。MCMはVLCとGTNに6割近く所有されています。(参考)。GTNとMCMの成長、また、国内の消費市場の回復により、SSIは、VNMの2021の業績をポジティブに評価するとのこと(参考)。コロナ次第と思いますが。。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本でもよく飲んでいて分かりやすいと思っている牛乳についても、ベトナムの状況は大きく異なることが少しだけ明らかにできたかなと思います。そしてそれが、VNMが下がり続けることやベトナムのマーケットを理解するのに役立つのかと考えました。参考にしていただければ幸いです。